アウシュビッツ収容所の場所はどこ?行き方&予約攻略法を旅のプロが伝授
アウシュヴィッツ収容所は正式名アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所。アドルフ・ヒトラー率いるナチスドイツがユダヤ人絶滅をもくろみ造ったホロコーストの象徴で「負の世界遺産」です。同じ過ちを繰り返さないという決意の認識のために一度は訪れるべきこの場所の予約法・行き方などの攻略法を実際に行った旅のプロがお教えします。
アウシュビッツ強制収容所とは?
アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所はアドルフ・ヒトラー率いるナチス・ドイツが第二次世界大戦中に推進したユダヤ人の絶滅政策(ホロコースト)のために造った強制収容所。ナチス・ドイツ政権下では数多くの収容所が造られ、ユダヤ人が収監され劣悪な環境の中で、強制労働を強いられました。労働ができない人々(子ども・障がいのある方・女性・老人)は、罪もないのに処刑されていましたが、その中でもアウシュビッツ強制収容所は最も多く犠牲者を出した収容所です。
1979年、2度と同じ過ちが起こらぬようにとの思いから、ユネスコ世界遺産委員会は、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所を世界遺産に登録。世界中から年間約140万人もの人々が、追悼の祈りを捧げるため、また、この場所で起きていた事実を知るために訪れます。
ここは日本人としても一度は訪れたい場所。行き方や入場方法を調べている人もたくさんいるのではないでしょうか。今回はそんな皆さんのために、実際にアウシュビッツ強制収容所に行った「トラベル・スタンダード・ジャパン」の「旅のプロ」が攻略法をお教えします。
アウシュビッツ第2収容所ビルケナウの引き込み線
アウシュビッツ収容所の場所はどこ?
名前がドイツ語であることからドイツにあると思われている方も多いと思いますが、ポーランドの古都・クラクフ(Krakau)の郊外、オシフィエンチム(Oświęcim)という都市にあります。ナチスドイツはドイツ語でこの都市をアウシュビッツ(Auschwitz)と呼んだため、世界的には「アウシュビッツ強制収容所」の名で知られることとなってしまいます。
なぜオシフィエンチムに強制収容所が造られたの?
第2次世界大戦時にナチス・ドイツは占領されていたポーランド。ナチス・ドイツは、オシフィエンチムが「ヨーロッパの中心に位置」「ユダヤ人を運搬するための鉄道接続が良い」などの理由から、収容所建設に最適と判断しました。
有刺鉄線が張り巡らされたアウシュビッツ強制収容所
日本を発つ前にすべきこと
アウシュビッツ強制収容所の見学方法と旅のプランを計画する
アウシュビッツ強制収容所の入場や見学には、いくつかの方法があります。ご自身の滞在先、スケジュールに合ったプランを、チケット予約の前に決めましょう。
アウシュビッツ強制収容所は、移動・見学で1日がかり。旅行のついでに行く、というよりは旅のメインに考えた方が、旅程が組みやすくなります。
①【一番楽!】首都ワルシャワ発の見学ツアーを予約
ポーランドの滞在が短く、首都ワルシャワ滞在の人に断然おすすめしたいのがこの方法。
メリット
◎ワルシャワ中央駅発⇔クラクフ中央駅着の鉄道チケットを現地オプショナルツアー会社が手配
英語と時刻表を見ながら行う海外の鉄道チケット予約は、かなり面倒。それをすべてオプショナルツアー会社が行ってくれます。チケット代も料金に含まれているので安心。また、プラットフォームに降りたその場所まで、日本語の会話が可能なスタッフが迎えにきてくれます。
◎クラクフからアウシュヴィッツ収容所のあるオシフィエンチムへは専用車で移動
ワルシャワ発のアウシュビッツ強制収容所オプショナルツアーは、待ち時間や移動時間のロスなし!
◎外国語の説明を日本語アシスタントが通訳してくれる
英語に自信があっても収容所のことは難しい。やはり日本語が一番
◎効率よく見学ができる
ガイドは収容所のポイントを抑えてまわってくれるため重要な場所を逃さず、かつ、効率的にまわってくれます。広大な敷地の収容所ですが、2時間程度で見学できるコースになっています。
◎ワルシャワ中央駅戻りもらくらく
もちろんワルシャワまでの帰りの鉄道チケットも自分で予約する必要はありません。
デメリット
◎料金が高い
本来、アウシュビッツ強制収容所の入場は無料ですが、ガイド+通訳のアシスタントが付くため、当然ながら割高。鉄道の手配もすべて手数料がついています。
◎ポーランドの世界遺産「クラクフの旧市街」に滞在できない
アウシュビッツ強制収容所は世界遺産ですが、クラクフの旧市街も世界遺産。どちらも見たい、という人は、泊まらないと難しい。ワルシャワ中央駅から行って帰るだけでは、本当はもったいない。
◎メインの場所しか立ち寄れない
アウシュビッツ強制収容所と第2収容所であるビルケナウ収容所、両方くまなく見ると6時間はかかります。くまなくじっくりと見たい、という人には向いていません。
ポーランドの首都・ワルシャワのみに滞在する人におすすめ
②【一番おすすめ】クラクフからの見学ツアー
第2次世界の戦火を免れ、奇跡的に残ったポーランド共和国時代からの古都・クラクフ滞在の人に断然おすすめの上、アウシュビッツ強制収容所に行くなら一番コストパフォーマンスに優れているのがこのコース。
メリット
◎オプショナルツアーの種類が豊富
クラクフ発であればアウシュビッツ強制収容所のオプショナルツアーがたくさんでています。1人でも予約できるプライベートツアーから、様々なグループと混在で行くもの、アウシュビッツ強制収容所ともう一つの世界遺産「ヴィエリチカ岩塩坑」も合わせて巡るオプショナルツアーもあります。
◎オプショナルツアーにしては値段が安い
クラクフまでの交通費は自己負担なので当然値段は下がります。また選択するツアーによってはお安め。
◎クラクフからアウシュヴィッツ収容所のあるオシフィエンチムへは専用車移動コースもあり
オシフィエンチム往復のバスには待ち時間があり計画通りの時間にクラクフに戻れる訳ではありません。オプショナルツアーの中には専用車移動のコースがあり、時間を効率的に使いたい人におすすめ。オプショナルツアーの中には「公共交通機関利用」のものもあり、日本語アシスタントと一緒に乗車してくれるプランもあるので安心です。
◎日本語アシスタントが通訳してくれる◎効率よく見学ができるについてはワルシャワ発のオプショナルツアーと同様です。
デメリット
◎個人で行くより値段が高い
物価の安いポーランド。クラクフから個人でガイドを付けずアウシュビッツ強制収容所に入場し、往復した場合、1000円以内ですべてが完結することを考えると高い。
◎旅情を感じられない
自力で行った時の達成感は「旅」ならではです。
世界遺産「ヴィエリチカ岩塩坑」も合わせて見学できるオプショナルツアーも
③【難関】アウシュビッツ強制収容所の日本人ガイドを指定する
アウシュビッツ強制収容所には、唯一の日本人の公式認定ガイド・中谷剛さんがいらっしゃいます。テレビ番組でも紹介されたことがあり、日本人観光客から絶大な人気。
メリット
◎正確な日本語のガイドが受けられる
オプショナルツアー会社の「日本語ツアー」は「日本語アシスタント」。収容所専属ガイドの方の言葉を通訳するお仕事です。しかし中谷さんは日本人。最初から日本語でガイドをしてくれるため通訳をする時間のロスがなく、スムーズ。
◎人数が多ければ安くなる
アウシュビッツ強制収容所の入場料は、ガイド代のみです。1人いくらというオプショナルツアーとは異なり、人数が増えれば増えるほど、ガイド料を人数で割れるため安くなります。
◎2時間~3時間で効率よく、かつ細やかにまわってくれる
通訳時間のロスが省ける分、2~3時間とはいえ、他のオプショナルツアーの日本語アシスタントとまわるよりも多くの場所を紹介してくれます。
デメリット
◎予約が取りづらい
前述した通り、大変人気のあるガイドさんのため、予約が取りづらいという難点があります。実は私も、中谷さんにガイドをお願いするために、出発の5か月前から自分のスケジュールと中谷さんの空き時間を合わせるために連絡を取っていましたが、残念ながらスケジュールが合致せず、断念しました。
以前は個人のメール・アドレスから予約を受け付けていたそうですが、予約が公式サイトからのオンライン予約に移行したため、公式サイト上から日本語ガイドを指定するようにアドバイスをしていただきました。
④個人で行く
自由気ままに行きたいし、じっくり見学したいから個人で入場する、と考えている方も多いかと思いますが、アウシュビッツ強制収容所は完全予約制。事前に入場方法を含めた予約が必要です(※現地オプショナルツアー会社利用の場合は必要なし)。
メリット
◎無料で入場できる
アウシュビッツ強制収容所は入場自体は無料。ガイドを付けることで金額が発生します。午前10時までの入場か午後は夕方(シーズンにより時間が異なるためホームページ上で要確認)からの入場になりますが、一度入場してしまえば何時間いても追い出されることがありません。
◎自由自在に見学できる
オプショナルツアーやガイド付きで入場すると、2時間程度の見学で終わってしまうため、重要な場所しか見ることができませんが、個人で参加すれば広大な敷地を自由自在に見学できます。
デメリット
◎交通手段や移動時間もすべて個人で把握
クラクフ中央駅からアウシュビッツ強制収容所のオシフィエンチムまではバスです。自力で行くので当然ですが、乗り場や時刻は自分で調べることとなります
◎順路がわからない
ガイドブックがなければ何がどこにあるのかわからないほど広大。見ておかなければならない場所は、ある程度勉強して行く必要があります。
長くいたい場所にとどまれるのは個人入場の魅力
アウシュビッツ強制収容所の予約方法
アウシュビッツ強制収容所の予約は、公式サイト上のオンライン予約のみ。公式サイト上のReservationをクリックの上、ガイドの有無、ガイドの希望言語、希望日時、人数などを入力していきます。
公式サイト:http://auschwitz.org/en
※2020年4月現在、新型コロナウィルス感染を防ぐため、アウシュビッツ強制収容は休館中。予約サイトも閉じられています。最新情報が入り次第、更新します
※画像は公式サイトより
予約のヒント
・10:00~15:00の混雑時(シーズンにより異なる)は、収容所専属のガイド付コースでしか入場できません
・アウシュビッツ強制収容所の開館は7:30から。個人入場は10:00前か夕方になりますが、混雑して見学しづらい状況を避けたい方は、朝一番の入場がおすすめ。
・前述通りガイドを付けない場合は入場無料
・閑散期は当日でも申込み可能。しかし、予約ですでに満員の場合は入場ができない、長時間待つなどの可能性が高く、前もっての予約がおすすめ。
オシフィエンチム行きのバスに乗りやすいホテルを予約
アウシュビッツ強制収容所のあるオシフィエンチムへはバスが便利。バス発着はクラクフ中央駅近くのバスターミナルとなるため、クラクフ駅の近く、もしくはタクシーですぐ移動できる旧市街近くのホテルを予約しましょう。
アウシュビッツ強制収容所見学は移動を含めると早朝から夕方まで時間が必要です。「ついでに」ではなく「わざわざ」訪ねる場所なので、丸1日はアウシュビッツ強制収容所に使っても良いスケジュールを組むことが必要です。
クラクフに宿泊する旅を計画している方は、ホテルの場所なども含めてお気軽にご相談ください。
クラクフ中央駅前
持参すべきもの
◆パスポート
身分を保証するため、アウシュビッツ強制収容所入場にはパスポートが必要
◆歩きやすい靴
アウシュビッツ強制収容所と第2収容所ビルケナウは、ツアーで2時間~3時間、個人でくまなくまわれば5~6時間歩くことになります。スニーカーなど歩きやすい靴で出かけましょう。
◆貴重品用の小さなバッグ
アウシュビッツ強制収容所内には小さなバックしか持ち込めません。30cm × 20cmまでのものが限度です
パスポートは絶対に忘れずに!
ポーランドの首都ワルシャワから古都クラクフまでの移動方法
ワルシャワ・ショパン空港からクラクフまでは下記の移動方法があります。
鉄道:ワルシャワ・ショパン空港からワルシャワ中央駅(Warszawa Centralna)まで鉄道で約20分。料金はPLN4.4ほど(約120円)。EIPに乗り換えラクフ中央駅(Kraków Główny)まで2時間半(2等車でPLN150)
※ワルシャワ中央駅には175番のバスで行く方法もあり。4:27~22:58まで10~20分間隔で運行。市内中心部まで約30分。料金は分単位で変わるため異なりますが約PLN4,4(約120円)程度
バス:ワルシャワ・ショパン空港からワルシャワ西駅のバスターミナルへ行き、バスに乗りますが事前にチケット予約が必要。クラクフバスターミナルまで約5時間 PLN30(約800円)
飛行機:約 50分ですが、国内線ターミナルの待ち時間などを入れるとトータル 3時間強。往復約 9,000円ほど
おすすめは移動しやすく、料金バランスが良い鉄道です。
ワルシャワ・ショパン空港
クラクフからアウシュビッツ強制収容所までの道のり
アウシュビッツ強制収容所までは、クラクフ中央駅のバスターミナルからバスで移動します。
バスターミナルに行くと、表記にアウシュビッツ(Auschwitz)というつづりは見あたりません。オシフィエンチム(Oświęcim)行きの時刻表が出ています。バスターミナルは広いので、オシフィエンチム(Oświęcim)行きの乗り場はどこか尋ねると良いでしょう。
所要時間は1時間30分で料金はPLN15(約460円)。
ガイド付きツアーで行かない方は、個人入場ができる時間に合わせて早朝、もしくは15:00すぎ(シーズンにより異なる)ごろに向かうことになります。私が個人で行った際は、6:20のバスに乗り、1時間30分でアウシュビッツ強制収容所に到着することができました。
バスは1人PLN15(約400円)
アウシュビッツ強制収容所・入場前の注意
◆トイレについて
トイレは入場口にある建物にしかありません。有料です。
◆日本語案内書購入が便利
ガイドを付けずに個人で入場する方は、入場口の建物にある売店で日本語の案内書を買うと、効率的にまわれる上に、その場所にある棟の展示が何なのか、はっきりとわかります。日本人なら英語のガイドを付けるより、この本を購入する方が頭に入りやすいはず。ガイドのテンポではなく、自分のペースで歩き、その場所で広げて読めるというのも利点です。PLN15 (約460円)とお安め。
◆大きな荷物は有料のクロークへ
持ち込めるのは30cm × 20cmのバッグまで
これ1冊があれば、ガイドなしの個人入場でもまわるべき場所が理解できます
帰りはバスでクラクフへ
クラクフまではバスで帰ります。来た時と同じ場所からバスが出るので乗車しましょう。
ちなみにクラクフ行きのバスは午後は1時間に1~2本しかありません。到着時に戻りのバスの時間を写真に撮り、敷地の広さを考えバス停に戻ること。
クラクフ中央駅のバスターミナルには夕方着
所在地:Ul. Wiezniow Oswiecimia 20, 32-063 Oswiecim
開場時間:7:30~19:00(6〜8月)7:30~18:00(4・5・9月)7:30~17:00(3・10月)7:30~15:00(1・11月)7:30~14:00(12月)7:30~16:00(2月)
※1月〜3月・11月の10:00~13:00、4月〜10月の10:00~16:00、12月の10:00~12:00はガイドツアーのみ入場可。ただし状況により時間の変更があるため詳細は公式サイト要確認
※身元確認のため、要パスポート持参
公式サイト:http://auschwitz.org/en
定休日:1月1日、12月25日、聖日曜日
入場料:無料(ガイドツアーは有料)
ポーランド・クラクフへの旅はお気軽にお問い合わせください
20世紀最大の悲劇と言われるアウシュビッツ強制収容所での悲劇。同じ過ちを繰り返さぬ決意と追悼の意味を込め、一度は訪れてみてはいかがでしょうか?
また、ポーランドのクラクフは、素晴らしい世界遺産の街です。
オプショナルツアーや便利なホテルのご相談など、お気軽にお問い合わせくださいね。